発火ドライヤー

ある穏やかな日のこと。ドライヤーから発火した。

「こんなこと滅多にないんですけどねえ〜…」焦げた部分を治すプロフェッショナルのその人は何度も首を傾げていた。

しかしわたしには思い当たる節があった。

発火元のそれは今はもう生死さえも確認出来ない、絶縁した人物が使用していたもの。前触れもなく忽然と姿を消した。消息不明。

何かにせよ、それは執着を手放すことを懇願するメッセージであることにした。発火元のドライヤー、元所有者の今もその先もわたしは知り得ることはないと。

捨てた。ついでに数年前に髪がゴワついていることが悩みの人物から貰った、なんらかの動物の毛で丁寧に造られた高級クシも捨てた。

「んー、今日のトークのテーマは〝自由だね〟フリーダム、Freedom!」

電話口のその人とは数ヶ月に一度掴みどころのない話をする。しかし何故だか頭上にある空間で通信を交わし落とし込んでいる。

何かがわたしに手招きしているのは分かる。掴もうとしても掴めない。一体何だろう。とりあえず好きなことをしよう。

こうした行為。文字を書くことなど。